Kellie Carter Jackson著「We Refuse: A Forceful History of Black Resistance」
黒人たちが人種差別への抗議行動を起こすとすぐに「その行動は平和的なのか」が問われる風潮があるなか、サボタージュ・逃散・武装しての自己防衛や一斉蜂起など黒人たち、とくに黒人女性たちがさまざまな形で白人至上主義を拒絶し自由を求めてきた歴史を掘り起こす本。
奴隷とされた黒人たちが武装蜂起してフランスからの独立を果たしたハイチの革命や黒人たちが決定的な役割を果たしたアメリカ独立戦争や南北戦争を含め、歴史のさまざまな場面において自由を求める黒人たちはあらゆる手段を使って自らの解放を求めてきた。地下鉄道を通して奴隷とされた同胞を南部から北部、そしてカナダまで逃がす仕組みを作った元逃亡奴隷の黒人女性ハリエット・タブマンは普段からピストルを持ち歩き、南北戦争では部隊を率いて700人の黒人奴隷たちを解放したが、彼女は決して例外的な英雄ではなく、武装して立ち上がった多数の黒人たち、女性たちの一人だったことを、彼女に比べてあまり知られていない人たちの存在に触れつつ論じる。自衛のための武装を呼びかけたのはマルコムXやブラックパンサー党の男性指導者たちだけではない。
ハイチやアメリカの独立戦争から現在まで歴史を追ってさまざまな形の「拒絶」を紹介しながら、最終章は生活の中に根付いた歓喜、プライド、ユーモア、アートにも自由への渇望と白人至上主義への拒絶が組み込まれていることを指摘。これだけ人間性を否定されてきたのに、そして抑圧との闘いはまだ続いているのに、どうして黒人は笑い、踊り、歌うことができるのか、という質問をひっくり返し、そうした日常の歓喜にこそ抵抗を見出し、映画「ブラック・パンサー」に代表されるアフロヒューチャリズムを取り上げることで、黒人の歓喜(ブラック・ジョイ)がどういう歴史から繋がっているのか、どういう未来に繋げようとしているのか示して、本書は終わる。表紙の絵画はアーティストTaha Clayton氏による「愛の戦士」と名付けられた作品でめっちゃカッコいいし内容にもあっている。