Joseph E. Stiglitz著「The Road to Freedom: Economics and the Good Society」

The Road to Freedom

Joseph E. Stiglitz著「The Road to Freedom: Economics and the Good Society

ノーベル賞を受賞した経済学者のスティグリッツせんせーが「自由」というお題目を保守派やリバタリアン、ネオリベ、新古典派経済学者らの手から取り戻そうとする本。タイトルはもちろんハイエクへの対抗。

保守派の言う自由は一部の特権層だけの自由で大多数の人たちの自由を脅かすものだし、何事も市場に任せるのが効率的だという考え方は現実にはありえない前提をいくつも必要としている、政府が適切に規制することでより多くの人たちが自由に生きることができる、そもそも収入の多い人がそれだけ多く貰うべき道徳的な根拠なんてないし、同様に貧しい人がそれを甘受するべき理由もないよね、という、まあスティグリッツならそう言うだろうなあという話だけど、ミルトン・フリードマンとの直接のやり取りにふれたりするなど、いちいち保守派をチクチク刺していく。政府が規制を増やしたり新しい役割を果たそうとするとすぐに「社会主義になる、自由が奪われる」とか保守派は騒ぐけど、歴史的に見て政府が役割を少しずつ肥大化していった結果としてスターリニズムやファシズムのような全体主義が実現した例は皆無で、それらは実際には政府が人々の生活を守らなかったせいで革命が起きたりポピュリズムが爆発した結果生まれている、というのはそうだなあと。

国内で政府が過剰な市場主義から人々を守るために経済に介入すべきなのと同じく、国際的にもパンデミックや気候変動の対策などで協力関係を築いて行動をともにする必要があるとしたうえで、アメリカが他国がやったら非難するのに自国は同じことをやったりするなどあまりに自分勝手なことをするせいでそうした国際的な協力の芽を摘んでいる、というのも分かる。しかしまあ、ロールズの「無知のヴェール」にたびたび言及していたりして、それが悪いというわけではないのだけど、いまさらこれ読む必要ある?とは何度か思った。