Gabriela Leite著「Daughter, Mother, Grandmother, and Whore: The Story of a Woman Who Decided to Be a Puta」
2013年に亡くなったブラジルのセックスワーク活動家・HIV/AIDS活動家が2008年に出版した自叙伝の、ようやく出された英語版。アメリカのセックスワーク活動家で「セックスワーク」という言葉を作ったキャロル・リーさんが2022年になくなる前に英語版に向けての序文を執筆しており、リーさんが生前書いた最後の原稿でもある。
著者は大学を出て外資系会社で働いていたエリート白人女性だけれど、シングルマザーになったことで職を失ったばかりか、敬虔なカトリック教徒である家族によって子どもを奪われたことをきっかけに性労働をはじめる。ストリート出身でないためいろいろミスをおかして食い物にされたりもしたけれど、当時まだ独裁政権が続いていたブラジルで警察による横暴に抗議するなどの活動にも関わっていく。性労働は恥ずかしい、後ろめたいものであるという世間の偏見を跳ね除け、堂々と自らを売春婦と呼んで活動する著者は世間からの認知されていく。
「売春婦という言葉は差別的で良くない、セックスワーカーと呼ぶべき」という主張が強い国際セックスワーカー運動のなかで、自分は売春婦だ、売春婦のなにがいけない、という著者の主張は力強く、HIV/AIDS危機に対抗するためにほかの売春婦やトラベスティ(≒トランス女性)らとともに活動したり、その資金を捻出するためにファッションブランドを立ち上げたり、しまいには選挙に立候補したり(落選したけど)、エネルギーすごいかっこいい。レズビアンのセックスワーカーたちとの交流の話もおもしろい。あと各章のはじめに掲げられた「売春婦の十戒」が普通にお仕事的なアドバイスで笑った。