
Danny Bate著「Why Q Needs U: A history of our letters and how we use them」
英語のアルファベット26文字を26の章で取り上げつつ英語における表記や発音、単語の歴史を綴る本。
言語好きなわたしから見て、本書はタイトル(どうして単語の中でQは必ず直後にUを伴うの?という疑問)や公式の紹介文に含まれるいくつかの疑問(どうしてWは「ダブルU」に聴こえるのか、どうして「circus」という単語でCの文字は2つの異なる発音になるのか、など)にあまり惹かれなかったし、26文字それぞれに章を振るというのも、現在の英語のアルファベットに含まれる26文字だけでは説明しきれないことが多々あるしそもそも26文字のなかにも重要性でかなり格差があるよね?と思えたりして、あんまり期待はしてなかった。
でも読んでみたら最初の数章で古代エジプトのヒエログリフやフェニキア文字、ギリシア文字からの繋がりを紹介したうえで、それぞれの文字についてこれまで思いつきもしなかった疑問もたくさん出てきて、それらが逐一説明される。というか、どう考えてもいらない文字があったり必要なはずの文字がなかったりするなど、まあ大抵の不思議な現象は「歴史的な偶然でそうなった」というだけの話なんだけれども、ヨーロッパ人たちの古代ローマへの憧れとかあまりピント来てなかった話もあったし、おもしろい。英語の奇っ怪なスペリングや非合理的なアルファベットを合理的に変革しようとした錚々たる先人たちの失敗や敗北について書かれたGabe Henry著「Enough Is Enuf: Our Failed Attempts to Make English Eezier to Spell」にもあったけれど、実際の用法や発音に合わせて言語を修正しようとしても、人々の会話における言葉の用法や発音の変遷は文字やスペルの変化よりずっと早いので追いつかない、というのは納得。
もっと軽い雑学的なノリの本なのかと思ってたけど、こじらせてる言語オタクの期待にちゃんと応えてくれるしっかりした本でした。それが読者層を広げるのか狭くするのかは知らないけど。