Charles Murray著「Facing Reality: Two Truths about Race in America」

Facing Reality

Charles Murray著「Facing Reality: Two Truths about Race in America

共著「The Bell Curve」(1994)以来人種とIQの関連やその影響についての主張が科学的人種主義であるとして批判されてきた政治学者が、去年起きたBLM運動の盛り上がりに危機感を覚えて出した新著。…かれは生涯をかけて左翼や人権活動家のアイデンティティ政治と戦ってきたけど、いまでは中道左派と目されてきたバイデンら民主党主流派や大企業、大手メディアまでもが左翼のアイデンティティ政治に同調し、アメリカ独立以来の価値観である個人主義が失われている、と主張。その中でまともな説明もせずに「批判的人種理論」(CRT)を叩いたりと、いまどきの安っぽい右翼言説のコピーも。

著者の言う人種についての「2つの真実」とは「人種間において認知能力の平均値に差があり、それが個人や集団のあり方に大きな影響を与えている」「人種間における犯罪性に大きな差がある」。そのあたりはまあマレーやかれの仲間たちのいつもの見飽きた主張で、科学的な指摘が人種差別だとの言いがかりにより沈黙させられている、と言いつつ沈黙させられている例として挙げられているものが科学と関係ないふつーのレイシズムだったりして、犬笛ごくろうさまとしか。わたしはかれがBLMについてなにを言っているのか興味があったのだけど、暴動や略奪と決めつける以外とくになにも言ってなくて肩透かし。まあかれにとって敵はBLMじゃなくて、BLMに(口先だけでも)賛同する企業や政治家なんだろうけどね。