Chad Sanders著「How to Sell Out: The (Hidden) Cost of Being a Black Writer」
シリコンバレーやハリウッドで働きニューヨーク・タイムズのオピニオン欄にも登場して注目を集めた黒人男性ライターが、黒人たちの痛みや苦しみをリベラルな白人エリートに切り売りして築き上げてきたキャリアを振り返り、もう二度と人種差別については語らない––次にお金がどうしても必要になるまでは––と決意する本。
ジョージ・フロイド氏殺害をきっかけに仕事を増やしてはじめは喜んだけれども、そうして増えた仕事の内容は黒人の痛みを「良心的な」白人たちに説明してエンターテインメントとして消費させるセルアウトみたいな活動で、それによって精神的に擦り切らせていった著者の経験はとてもよくわかる。それはかつてグーグルなどシリコンバレーで働いていたときに、同僚としてではなくクールで(他の黒人とは違い)友人付き合いできる黒人として重宝されていた経験と形は異なるけれども、かれ自身を見ない点では同じだった。
しかし著者がどういう経緯でグーグルで仕事をしてそこからライターになり2020年にブラック・ライヴズ・マター運動の盛り上がりを受けて「黒人差別に向き合おう」という姿勢を(本心からかどうかはともかく)打ち出したメディアで活躍するようになったのか、ちゃんと説明しているんだけどどうも分かりにくく、ああポッドキャストやらなんやらで生計を立てているインフルエンサーとかわたし全然分からないなあと。