Carl Siciliano著「Making Room: Three Decades of Fighting for Beds, Belonging, and a Safe Place for LGBTQ Youth」

Making Room

Carl Siciliano著「Making Room: Three Decades of Fighting for Beds, Belonging, and a Safe Place for LGBTQ Youth

ニューヨーク市でホームレスになっているLGBTユース(未成年)の子たちの支援活動に30年間以上関わり、かれらのためのシェルターを設立したゲイ男性活動家がその経験を綴った自叙伝。

30年以上も活動してきただけあって、銃撃された2pacが病院に搬送されるのを目撃した子たちの話を聞いた話をはじめ、AIDS/HIV危機やヘイトクライム、薬物のオーバードーズなどによってたくさんのクィアたちが亡くなっていくのを経験したり、ジュリアーニ市長時代のホームレス排除や9/11同時多発テロ事件、少しでも批判すると激昂して報復してくるアンドリュー・クオモ知事との関係など、ニューヨーク現代史を舞台に、クィア・ユースが安心して眠ることができる場所を作るために戦ってきた著者の体験が書かれている。

クィア・ユースのためのシェルターを設立するための活動にシルヴィア・リヴェラが参加してきたり、マドンナとレディ・ガガがそれぞれ全く無関係にほぼ同時期にクィア・ユースを訪れてきたり(マドンナは専属シェフを引き連れてきて料理をふるまい、レディ・ガガはプレゼントを多数持ってきた)といった話とともに、生活のために危険のために性労働を行っている子や警察による「浄化作戦」で捕まり悪名高いライカーズ刑務所に入れられたりする子たちのことを心配しながら過ごす日常の話も書かれていて、クィア・ユースではないけれどストリートで性労働をしている女性やクィアたちの支援活動をしているわたしも共感できることが多い。シルヴィアが「この子たちはわたしたちの子どもなんだ」として、同性婚の実現ばかりに集中していた当時のゲイやレズビアンたちにクィア・ユースの支援を訴えていたのは印象的。

まあ、わたしはストリートユース運動をやっていたクィアな元ユースたちにも知り合いがたくさんいて、著者が運営していた団体もそんな美談ばかりではないこともわかっているけど(それをいうならわたしがやっている団体だってそんな良いところばかりではない)、大人になってそれなりに安定した暮らしをしているクィアたちがストリートで暮らしているクィア・ユースを見捨てずに支援するべきだという考えはごもっとも。

ていうか今思い出したんだけど、昔あるユースのためのホームレスシェルターで性労働と護身術や安全についての話し合いに呼ばれて準備して行ったところ、たまたまレディ・ガガがコンサートに来ていて無料のチケットをたくさんシェルターに寄付したおかげで誰も話し合いに来なかったよ!まあそりゃわたしだってチケットもらいたかったくらいだから仕方がないけど!てかシェルターの人、どうせ誰も来ないのわかっていただろうから話し合いは中止ししといてくれよ!