Reah Bravo著「Complicit: How Our Culture Enables Misbehaving Men」

Complicit

Reah Bravo著「Complicit: How Our Culture Enables Misbehaving Men

7人の同僚や元同僚らとともに大物テレビ司会者による職場でのセクハラを告発した(その後も告発は相次ぎ最終的には35人になった)著者が、個々の悪質な男性の存在だけでは説明できない、そうした男性たちの加害行為を奨励し、あるいはそれに対する責任追及を遠ざけている仕組みについて論じる本。

個々の加害者たちの責任を弱めるわけでも被害を受けた人たちを犠牲者非難するわけでもないとしつつ、いまの社会は男性による加害行為を容認し、被害を受けた女性を孤立させ泣き寝入りさせるような認識が男性にも女性にも広く共有されていると著者は指摘。たとえば自身も被害を受けた著者ですら、ほかの被害者の話を聞いていると思わず「自分だったら違った行動を取っていた、自分なら被害を逃れることがでた」と頭の中で考えてしまうことを自覚し、それがどこから来るのか考える。

著者が本書で取り上げるのは、行き過ぎた個人主義、犠牲者非難に容易に繋がる公正世界仮説、常に周囲の空気に気を配り男性への配慮を絶やさないように訓練され身につけた規範的女性性、男性に魅力的だと見られることを目指すべきだと強要しながら実際にそうなると実力もないのにセックスアピールだけでのし上がってきたと見なされたり、そうした扱いに不満を言うとチャンスは誰でも平等にあるとしてさらなる努力を求めるメリトクラシー信仰や地位の高い男性たちのナルシシズムなど、アメリカ社会に特に顕著な社会規範やイデオロギーの数々。

MeToo運動とそれに対するバックラッシュがいったん落ち着いた今だからこそ、その渦中で一人の被害者・告発者として、そしてジャーナリストとして戦ってきた著者の分析は貴重。