Noah Giansiracusa著「Robin Hood Math: Take Control of the Algorithms That Run Your Life」

Robin Hood Math

Noah Giansiracusa著「Robin Hood Math: Take Control of the Algorithms That Run Your Life

オンラインの行動だけでなく車の運転からスーパーでの買い物まで個人の行動がデータとして記録・分析され売られているいま、ソーシャルメディア・プラットフォームやその他の広告メディアやテクノロジー企業が使っている数学の簡単な仕組みを説明し、同じ数学的手法をわたしたち個人が自分の目的のために使う方法を数学者が指南する本。

内容は自分の人生の選択に統計学的手法をどう役立てるかというものが中心で、たとえば米ニュース雑誌が毎年発表している「大学ランキング」をそのまま信じ込むのではなく自分にとって大切な要素を評価に入れてランキングを付け直す方法や、コロナ感染の危険をどの程度心配して行動を決めるべきかベイズ推定を使って考える方法など、極力数字を出さずにわかりやすく説明している。

後半ではイーロン・マスクが血迷って公開したXの(以前の)ソースコードやフェイスブックの内部告発を資料としてソーシャルメディアのアルゴリズムを分析し、どうして興味のない記事がたくさん表示されるのか、それを変えるにはどう行動すればいいのかといった話を進める。最後にはテクノロジー・プラットフォームによるプライバシー侵害や行動監視の問題を取り上げ、それらを禁止するのではなくそれらのプラットフォームに掲載される広告にプラットフォームの規模とパーソナライゼーションの度合い(どれだけ個々のユーザの行動の解析をもとに広告を掲載しているか)をもとにした累進課税を主張し、それによりプラットフォームの寡占化と過度な個人情報の収集への歯止めとしようとする。

最初と最後にプライバシー侵害や監視テクノロジーの話題があるけれど、数学のアルゴリズムを人々の手に取り戻そうとしている中盤のテーマとあんまりうまく繋がっておらず、これは別の本でも良かったのではと思った。というかあんまり最初の話題と中盤が関係ないものだから大丈夫なのかと思ったら最後でちゃんと最初のテーマに戻ってまとめてきたのは、最後まで読んで安心したポイントだけど。ただ実際にプラットフォームの規模はともかくパーソナライゼーションの度合いによる累進課税をどうやるのか著者も分かっていないみたい。