Andrea Zanin著「Post-nonmonogamy and Beyond」

Post-nonmonogamy and Beyond

Andrea Zanin著「Post-nonmonogamy and Beyond

ノンモノガミーについての短い本のシリーズの最新作で、ポスト・ノンモノガミー、すなわちノンモノガミーからそれ以外の形態に移行した人たちに向けたガイドブック。以前紹介したAlyssa Gonzalez著「Nonmonogamy and Neurodiversity」も同じシリーズ。

以前も説明したとおり、ノンモノガミーとはモノガミー(一夫一婦、あるいは性別に関係なく二人の人が排他的なパートナー関係を結ぶこと)ではない、という意味。三人以上が対等な関係で付き合うこともあれば、メインのパートナー以外と付き合ってもいい、あるいはメイン以外の特定のパートナーがいてもいいなど、実際のあり方はさまざま。著者ももともと三人で付き合う形態のノンモノガミーの生活をしていたのだけれど、そこから別れ、さらに病気になり、そのうえコロナウイルス・パンデミックが起きて自宅に籠もらざるをえなくなるといった感じにさまざまな状況が重なり、もう何人もで付き合うのは辛いかも、と思うようになった。

ノンモノガミーがその時の恋愛相手との取り決めなのか、生活実態なのか、それともアイデンティティなのか、という点ではノンモノガミーの人たちの中でも意見が分かれ、実際に付き合う相手がいなくても、あるいはたった一人だけの特別なパートナーとしか付き合っていないとしても、複数の相手との関係に開かれているのであればアイデンティティとしてノンモノガミーだ、という考え方もあるが、著者は実際にそうした関係への指向も失っており、ポスト・ノンモノガミーだと言える立場。

アメリカの反LGBT運動では「信仰によりヘテロセクシュアルになった元ゲイ」や「自分はトランスだという妄想から自由になったデトランス」が称賛されているが、著者の言うポスト・ノンモノガミーはそういった種類のものではない。それは、ノンモノガミーを経験し、その価値も分かったうえで、自分にはそれは合わないな、とか、自分は別の生き方がしたいな、と気付いた人たちが、ノンモノガミーに対する偏見への批判はそのままに、ノンモノガミー後の生き方を考えようとするものだ。

例によってめっちゃ短いけど、「不当な拘束のないノンモノガミーのほうが自由で正しいのに、自分はどうしてそれに適合しないんだ」と悩んでいる人にとってはこういうポスト・ノンモノガミーのあり方に触れられるのは良いことかもしれない。