Aida Mariam Davis著「Kindred Creation: Parables and Paradigms for Freedom」

Kindred Creation

Aida Mariam Davis著「Kindred Creation: Parables and Paradigms for Freedom

エチオピア移民の家庭で育った著者が、親や親戚から語り継がれたアフリカの知恵をアフリカ系アメリカ人やアメリカ先住民の伝統と組み合わせて新たなあり方を創造しようとする本。

本書は「Re-member」「Refuse」「Reclaim」の三部から構成されており、それぞれ植民地主義とそれへの抵抗の記憶、白人至上主義的秩序の否定、そしてアフリカや北米の先住民たちが語り継ぐ正しい人と人、人と土地や自然、人と動物のあり方を取り戻すといった内容。著者の祖父母や親戚はイタリアのファシスト政権によるエチオピア侵略と戦った反植民地主義の闘士たちであり、本書はアフリカ系アメリカ人の伝統よりもアフリカ人の歴史やアメリカ先住民の文化など、反植民地主義的な要素に重点が置かれている。とはいえタイトルの「kindred」やサブタイトルの「parable」というキーワードを見れば分かる人にはピンとくる通り、オクタヴィア・バトラーをはじめアフリカ系アメリカ人たちが生み出したアフロフューチャリズムの影響も強く出ている。(ちなみに別のところで聞いた話によると、アフロフューチャリズム、アフリカ系アメリカ人フューチャリズム、アフリカ人フューチャリズムはそれぞれ違うらしいのだけど、具体的にはわたしはよく理解してない。)

植民地主義時代に独立を守ったエチオピアの反植民地主義闘争の歴史についての話など学ぶところも多いし、著者が主張する脱植民地主義的デザインの思想も納得がいくのだけれど、ただアメリカ先住民文化についての記述は画一的・一面的な印象がある。エチオピアの反植民地主義の立場からアメリカ先住民による植民地主義への抵抗に共感するのは分かるけれど、共感だけではまだ不十分だな、というのは、本書の内容に共感している自分自身にも言い聞かせたい。