
Matthew Avery Sutton著「Chosen Land: How Christianity Made America and Americans Remade Christianity」
タイトルにあるとおり、キリスト教がいかにアメリカを形作り、またアメリカがいかにキリスト教を形作ったか明らかにする本。紙媒体で656ページとなかなかの大著だけれど、丁寧に歴史が紡ぎあげられ終始興味深く読んだ。
本書はアメリカにおけるキリスト教の歴史的な展開について、それぞれが各時代に受け継がれた四つの大きな流れを中心にしてまとめている。それらを著者は伝統や教会の権威に重きを置く保守派、個人の信仰と神との関係性を重視する再興派、社会の変化とともに信仰が変化することも受け入れ他宗教との共存を目指すリベラル派、そして労働者階級や黒人やラティーノ・先住民、同性愛者らの解放を信仰の中に見出す解放派と分類し、それらが時に合流したり対立したりしながら全体の流れが生まれてきたことを示す。
歴史的経緯から信仰の自由を掲げ、憲法により国教を持たないことを規定したアメリカ合衆国は、その結果として各宗派のあいだでの信者獲得競争を引き起こし、さまざまな新しい信仰が生まれたが、実際にそれが適用されたのは白人のプロテスタント系キリスト教会のみ。戦時動員時の必要性などからそれがカトリックやユダヤ教にまで拡大されたあと、リベラルな主流派キリスト教会はイスラム教や仏教、その他世界中のさまざまな宗教への歩み寄りと相互尊重を進めたが、宗教が市場競争にさらされるなかそうした教会は人気を失い、「繁栄の神学」やキリスト教ナショナリズムなどを掲げ共和党と一体化した現代のアレに取って代わられた。
以前紹介したNina Sankovitch著「Not Your Founding Father: How a Nonbinary Minister Became America’s Most Radical Revolutionary」に出てきた(そういう言葉は当時なかったけれど現代の言葉でいうと)ノンバイナリーな新宗派指導者パブリック・ユニバーサル・フレンドの話から、ジム・ジョーンズの人民寺院やブランチ・ダビディアンなど近現代のカルト的な宗派の話まで、決して主流派とはいえないさまざまな宗派についても丁寧に取り上げられていて、これだけ長い本なのに飽きない。満足。