Daryl Fairweather著「Hate the Game: Economic Cheat Codes for Life, Love, and Work」

Hate the Game

Daryl Fairweather著「Hate the Game: Economic Cheat Codes for Life, Love, and Work

「ヤバい経済学」のスティーヴン・レヴィットにあこがれてかれの弟子になるために新古典主義で有名なシカゴ大学経済学部で学び、黒人女性としてはじめて同学科の博士号を取った著者が、人種差別や性差別、資産の有無による機会の格差など社会というゲームの不平等な仕組みを指摘しつつ、それでもゲームで勝者となるためのチートコードとしてゲーム理論や行動経済学を解説する本。

そもそもの話としてゲーム理論と行動経済学ではいろいろ前提が異なるわけだけど、そのあたりは詳しく触れられないというか、タイトルにもなっているようにだいたいゲーム理論の応用について書かれている。黒人女性として不利な立場に置かれた著者が、進学や就職、昇給や昇格のネゴシエーション、自宅の購入や売却などの場面で駆使してきた経済学的な論理が紹介されていく。どういうゲームをプレイしているのか、そのゲームのルールを規定しているより大きなゲームはなにか、といった思考法が分かりやすく説明されているし、こういった考え方を新鮮に感じる人はいると思う。

個人的には、具体的な会社名は出していないけれど明らかにアマゾンだと思われる会社で仕事をしていた話が一番おもしろかったのだけれど、アマゾンの異様な企業文化から逃れてチーフエコノミストとして採用されたレッドフィンもあれはあれでいろいろある会社だと思うんだけど、あのおかしな(だけどエンゲージメント最大化に貢献していると思われる)不動産価値査定のアルゴリズムとかこの著者が考えてるのかなと思うともやもやしたり。

しかし著者がどの大学院に進もうか迷って憧れのレヴィットに相談したところ、「だったらうちに来るといいよ、シカゴ大学の経済学部に来た学生は死ぬほど苦労するから、本当に自分がこの分野に向いているかどうか判断するのに役に立つよ」と言われた、というのはさすがレヴィットとしか。