Daniel Whiteson & Andy Warner著「Do Aliens Speak Physics?: And Other Questions about Science and the Nature of Reality」

Do Aliens Speak Physics?

Daniel Whiteson & Andy Warner著「Do Aliens Speak Physics?: And Other Questions about Science and the Nature of Reality

地球人類がいつか地球外の知的生命体と接触したとき、人類は宇宙人の進んだ科学を教えてもらえるのか、そもそも宇宙人とのコミュニケーションは可能であり、また宇宙人の持つ科学や数学の体系は人類に理解が可能なのか、といった問題について論じる本。

人類の歴史のなかで、数学や科学は文化や言語などに関係なく世界中の誰にとっても同じで客観的な知の体系だとされてきた。しかしその実態はというと数学や科学といえど社会的な意味付けや区分から自由ではなく、炭素ベースかシリコンベースかも分からず知覚器官や知能の仕組みも異なる可能性がある宇宙人とのあいだに数学や科学の分野であっても会話が成り立つかどうか定かではない。地球人に接触してくるだけの技術力があるからといってそこに科学があるかどうかも、人類が歴史のほとんどを通じて科学によらず技術を発達させてきたことを考えれば怪しいし、宇宙人たちが人類と同じように自然現象に疑問を抱きその謎を解明しようとするかも分からない。もしかしたらいまの人工知能のように確率論的な予測機能だけを極端に発達させながらその根底に科学的なマインドが存在しない可能性もあるし、そもそも宇宙人の科学的マインド自体が人類にとっては理解不可能かもしれない。

本書はそういった話を、人類の歴史を振り返りつつ、多様な文化における科学や数学についてのさまざまな考え方や捉え方を参照することで、同じ人類であってもこれだけ科学や数学の共有が難しく、体の作りも進化の過程も異なる宇宙人とのあいだの科学や数学を通したコミュニケーションはさらに困難であろうことを指摘する。と同時に本書は、いつか宇宙人が現れて、なんとか地球人とコミュニケーションが成立し、いまの人類がいまだに解き明かせていない宇宙の仕組みについて明かしてくれるという期待も滲ませていて、その希望が本書をおもしろくしている。

まあわたしてきに一番おもしろいと思ったのは、人類がかつて宇宙に送り出したメッセージの中で、わたしたちの星は太陽の周りを回る9つの惑星のうちの3番目です、的な図面があったのだけれど、それを見た宇宙人が太陽系に来てみたら「え、なに、惑星8つしかないじゃん?」と困惑するという話。いやいや宇宙人が国際天文学連合による惑星の(再)定義を前提にするわけがないじゃん、という笑い話なんだけど、「宇宙人も惑星の数について議論するのか?」という章になっていておもしろかった。