Ada Limón著「Against Breaking: On the Power of Poetry」

Against Breaking

Ada Limón著「Against Breaking: On the Power of Poetry

バイデン政権時代に第24代桂冠詩人としてラティーナ女性としてはじめて任命されたエイダ・リモンが、2025年の退位に際して行った講演からふくらませたもの。

もともと桂冠詩人としての公式な任務は議会図書館の開会式において詩を朗読することなど多くはないものの、これまでの桂冠詩人たちと同様に著者は全国をまわり、詩がアメリカの歴史と人々の生活において果たしている役割、果たしうる役割を広く伝える活動を続けてきた。トランプ政権がはじまり、これまで確かだと思われてきたもの、世間が共有している価値観だと思われてきたものが次々と崩されるなか、商業化されないからこそ市場の浮き沈みに引きずり回されず、読む側にも解釈の役割を与えるからこそほかの媒体を超えることができる詩の重要性を訴える。

個人的には、詩人オードリー・ロードの言う「わたしがわたし自身を定義しなければ誰かのファンタジーによって噛み砕かれ丸呑みされてしまう」という言葉を受けた著者が、詩は書いた瞬間からそれを再定義し、真実を再規定し、また別の未来を想像することができるから、自分の物語を食い物にされることから逃れる手段になると語る部分が好き。わたし自身、自分の物語が政治的な文脈で読み解かれ、敵対する人たちによって勝手に解釈され、論評や批判の対象とされることを避けるため、個人的に大切なことは詩のかたちで発表してきたこともあり、とても共感した。