Karen Stollznow著「Bitch: The Journey of a Word」
古英語(アングロサクソン語)に遡る古い歴史を持ち現代もっともポピュラーな侮辱語の一つ「ビッチ」の歴史についての本。序盤から「ビッチ」という言葉の語源や古い用法などの話が怒涛のように流れ出して、え、これペース分配大丈夫?すぐ終わっちゃわない?と思ったけど、ジェンダーや性規範、世界のさまざまな言語に「ビッチ」がどのように取り込まれたか、ヒップホップやゲイコミュニティにおける用法など、さまざまなトピックを絡めて最後までちゃんと餡子が詰まってた。
日本ではなぜか「ビッチ」が「スラット」(性的にだらしない女)の意味で使われるけど、もともと「ビッチ」の意味は現代の「スラット」だったとか、「嫌な物事」という意味の名詞や「文句を言う」という動詞として用法がどこから来るのかなど、おもしろい話も多い。ただ人種差別に関わる部分がちょっと気になっていて、ヒップホップの話や男子刑務所における男性同士の性関係や性暴力についての話題の扱いに疑問があったし、Nワードを断りもなくそのまま書いてたり、無意識に人種差別的な言動をする中流白人女性に対して使われる「カレン」という俗語について女性差別だと言ったりするのはどうかと。あ、でも考えてみたら著者の名前「カレン」だったわ、そりゃ嫌だよね「カレン」という言葉にそんな意味が付いたら。