Sowmya Krishnamurthy著「Fashion Killa: How Hip-Hop Revolutionized High Fashion」

Fashion Killa

Sowmya Krishnamurthy著「Fashion Killa: How Hip-Hop Revolutionized High Fashion

サブタイトルは「ヒップホップはどのようにしてハイファッションに革命を起こしたか」だけれど、ハイファッションに限らずストリートウェアやカジュアルウェアも含めてヒップホップがファッション全般に与えてきた影響についてヒップホップの歴史とともに紹介する本。

内容は多岐に渡るので短い紹介では書ききれないけど、著名なアーティストやデザイナーが次々登場しそれぞれどのような影響を与えてきたか紹介されていて、新たに知ったことも多かった。てゆーかカニエやっぱ最近じゃなくてはじめからアレだな。あとダッパー・ダンの自伝、以前読みかけたんだけどすぐに読みたい別の本が出たので途中で止めたままになってたので、あらためて読み直そう。

ヒップホップが外見だけで差別される貧しい黒人たちのモノだった時には抵抗の論理として有効だったハイファッションブランドへのこだわりや金儲け=成功という価値観が、いまやメインストリームの音楽となり白人たちが聴くようになり資本主義的な拝金主義やブランド信仰の弊害も大きくなってきている。また一山あてたアーティストが自らのファッションブランドを設立することも多いけれども、かれら自身が着るファッションとファン向けに売るアイテムのあいだには階級的な格差があることが多いし、アーティストの人気が落ちればブランドの需要もなくなるのでビジネスとしても微妙、という話も。最近ではハイファッション・ブランドでもヒップホップアーティストがモデルとして起用されるだけでなくヒップホップ出身のデザイナーが採用されるようになっているけれど、社会的階級の象徴ともいえるハイファッションと持たざる者たちの抵抗の文化であるヒップホップのあいだの矛盾を抱えた親密な関係について考えさせられる。