Ron Wyden著「It Takes Chutzpah: How to Fight Fearlessly for Progressive Change」

It Takes Chutzpah

Ron Wyden著「It Takes Chutzpah: How to Fight Fearlessly for Progressive Change

29歳で連邦下院議員に当選して以来政界で活躍を続け、いつの間にか75歳と連邦上院の最長老の一人になっていた(けどめっちゃエネルギーある)オレゴン州選出の政治家、ロン・ワイデン上院議員の回顧録。

ワイデン議員といえば「インターネットを生み出した26単語」と呼ばれる通信品位法230条の「No provider or user of an interactive computer service shall be treated as the publisher or speaker of any information provided by another information content provider.(双方向コンピュータサービスのプロバイダーやユーザは、第三者のコンテント提供者によって提供された情報の出版社や発信者と見なされない)」という条文の執筆者であり、インターネットにおける一般ユーザの言論の自由を守る立場で知られる。20代の若者でありながら高齢者の権利を守るための運動に携わっているうちに高齢者たちの信頼を得て下院選挙に立候補するよう要請されて当選、のちに共和党のボブ・パックウッド上院議員が20人以上の女性たちからセクハラで告発され、自分でつけていた恥ずかしいセクハラ日記を公開されたことで辞任に追い込まれたあとの補欠選挙で上院に転身し、同性婚への支持を表明した最初の上院議員になったり、オバマ政権の医療保険改革やバイデン政権のインフレ軽減法に大きな影響を及ぼすなど大きな成果を挙げてきた政治家。

まあ本人による回顧録なので、カッコつけてるだろ、的には思うのだけれど、さすがに本人が79歳になる2028年の大統領選挙に立候補するといった野心はないらしく、本書が著者のキャリアの集大成になると思っていいはず。「ロン・ワイデンの12の法則」といういかにも成功者のお年寄りが言い出しそうな本人による格言が本書を通して語られるけれど、議員以外に関係なさそうなものも多く、一般読者はそれを読んでどうすればいいのかと。多くは既に亡くなったか引退した両党の大物議員たちとの交流や政治的妥協などの話はおもしろいけど、共和党が私物化されてしまったいまの状況でそんな古き良き上院の伝統を再現するのは無理だよねえ。まあ、わたしがオレゴン州に住んでいた10年以上にわたって著者がずっと地元の上院議員だったおかげで何度か実際に見たこともあって、わたし的にはいろいろ不満もあるんだけど、いまもまだ元気だしやるときはやる人だと思う。