Laura Bates著「Men Who Hate Women: From incels to pickup artists, the truth about extreme misogyny and how it affects us all」

Men Who Hate Women

Laura Bates著「Men Who Hate Women: From incels to pickup artists, the truth about extreme misogyny and how it affects us all

インセル、ナンパ講師、男性分離主義者、男性権利活動家などさまざまなタイプのミソジニーを抱えた人たちが作るコミュニティについての本。著者は著名なイギリスのフェミニスト。ミソジニー自体は昔からあるものだけれど、女性の社会進出やMeToo運動などを受け、自分たち男性が迫害を受けている、本来あるべき地位を奪われている、という被害妄想が多くの現代のミソジニストたちの共通項。それらは女性(や女性を独占しているとみなされるモテ男性)に対するテロリズムや性暴力、性暴力サバイバーやその他の女性に対するネットや実社会における陰湿な嫌がらせなど目に見える攻撃だけでなく、「女性はセクハラや性暴力について嘘をつく」という統計的に間違った前提を共有した、一見過激なミソジニストに見えない人たちによる自己防衛を口実とした女性差別(女性を雇わない、仕事上の機会に誘わない、など)という形で被害を広げることも。

著者はよく学校に招かれて生徒たちとジェンダーや性暴力についての話をするのだけれど、以前から子どもが思いついたフェミニズムへの疑問や批判は耳にしていたものの、近年たとえば「gynocracy/gynecocracy=女性による専制」のような一般ではあまり聞かない用語を口にする生徒や、具体的なデータを紹介しても一切受け入れずフェミニズム批判のスローガンを繰り返す生徒が増えてきたという。そうした生徒たちから話を聞いた彼女が知ったのは、かれらがYouTubeでフェミニズムやその他の反差別運動へのバッシングを繰り返すチャンネルを視聴していることだ。わたしの周囲でもそれまで一切そんな素振りを見せていなかった十代の男の子がほんの少し見ないうちに「性差別なんていまはもう存在しない」「間違ったことをしていなければ黒人が警察に殺されることなんてない」みたいなことをまくしたてるようになった例を見たことがあるけれど、それもアルトライト系YouTuberの受け売りだった。世間ではフェイクニュースの拡散の政治的影響についてFacebookやTwitterに厳しい目が向けられているけれど、子どもへの影響に関してはYouTubeの影響はものすごく大きい。

子どもたち、とくに男の子たちがネットを通して過激なミソジニーに影響される状況を踏まえたうえで、著者は子どもたちが右翼YouTuberに影響されないための下地を作ることを主張する。それにはジェンダーについて早くから対話することも含まれるけれど、子どもたちがネットに自分を認めてくれるコミュニティを求める動機となるような貧困やいじめによる社会的孤立を減らすことも必要。普段あまりわたしの観測範囲では目にしないようなものも含め、さまざまなパターンのミソジニーの描写に読んでいて息苦しくなるような本だけれど、対策はわりと普通で当たり前のことだった。