Georgia Cloepfil著「The Striker and the Clock: On Being in the Game」

The Striker and the Clock

Georgia Cloepfil著「The Striker and the Clock: On Being in the Game

オーストラリア、スウェーデン、韓国、リトアニア、ノルウェイでプロサッカー選手としてプレイしたアメリカ人女子サッカー選手が90の短い章(に加えてアディショナルタイム)でその競技人生を振り返る本。

わたしは女子サッカーのファンで、これまで元アメリカ代表のメーガン・ラピノー選手、アビー・ウォムバック選手、ブリアナ・スカリー選手に加えてオーストラリア代表サム・カー選手の本を紹介してきたけど(ってみんなクィアじゃんw)、本書を書いたのは彼女たちのような代表レベルのトップ選手ではなく、各国の二部や三部のリーグで競技してきた「その他大勢」の一人。競技人生のほとんどを通してたった一つのスーツケースを抱えて国から国へ、チームからチームへと渡り歩いた彼女だけれど、それでもそれぞれのチームの中では活躍を期待される「助っ人外国人」であり、同僚の選手の多くはサッカーでは十分な給料をもらえずに複数の仕事を掛け持ちしている。

子どもの頃から優れた運動能力があり、女子と一緒にスポーツするのは物足りないと男子に混じってフットボールやサッカーをやっていたけれど、思春期になると体が大きくなった男子に混ざることが難しくなり女子サッカーに注力。それだけ目立つ実力があってもレベルの高いアメリカのプロ女子サッカーリーグでは声がかからず、現役続行の機会を求めて代理人を通して海外のチームに自分を売り込んでいく。ノルウェイではついに国内トップリーグに参戦することができたけれども限界を感じて引退。タイトルの「ストライカーと時計」というのは、章立てのテーマにもなっている前後半合計90分の時計だけでなく、実力の伸び悩みと年齢的な衰えを踏まえた現役終了までのカウントダウンと、このまま外国で競技を続けて妊娠・出産の機会を逃していいのかという女子選手ならではのタイムリミットも意味している。

もともとサッカー選手でなければライターになりたいと思っていて、暇さえあれば図書館に通って本を読んでいた著者だけあって、短いながら印象的ですっと入り込んでくる文章が美しい。まあところどころ雑学入れすぎじゃ、と思うところもあるけど。著者の第二のキャリアを応援したい。