Jena Friedman著「Not Funny: Essays on Life, Comedy, Culture, Et Cetera」

Not Funny

Jena Friedman著「Not Funny: Essays on Life, Comedy, Culture, Et Cetera

著名な白人女性コメディアンによる新著その2。著者はジョン・スチュワートがホストをしていた頃のThe Daily Showなど数々の深夜コメディ番組のライターやプロデューサとして活躍し、脚本を担当した映画『続・ボラット』ではアカデミー脚色賞の最終候補に。

祖母の死などの辛い経験の最中にユーモアに救われた、という個人史は「You Can’t Joke About That: Why Everything Is Funny, Nothing Is Sacred, and We’re All in This Together」を書いたKat Timpf氏と同じ。でも深夜コメディ番組で働くほかの多くのコメディアンと同じくリベラルな著者は、彼女が直接見聞きしてきたコメディ業界における男性プロデューサやプロモータ、先輩コメディアンらによるセクハラの実態を告発するとともに、差別的なジョークや発言に対する批判の声を擁護する点でTimpf氏とは対照的。

保守派やセクハラや差別発言が批判された白人男性コメディアンらは「キャンセルカルチャー」を批判するが、コメディアンが政治的発言の結果キャンセルされるのは今にはじまったことではなく、歴史的にはセクハラや差別発言をした側ではなくそれらを告発する側が声を遮られてきた事実を指摘。セクハラや性暴力が処罰されず、差別的な発言がユーモアとして堂々とまかり通る現状に対して、それらの被害を受けてきた側がソーシャルメディアの手を借りて反撃できるようになったのがいわゆるキャンセルカルチャーだと主張する。ほとんどの場合、批判されたコメディアンは一時的に評判を落としても熱心なファンに支えられて活動を続けており、セクハラや差別を受けた人のほうがバッシングを受けてダメージを受けることも多い。ただ、同じように批判されても、白人男性のコメディアンに比べて女性や非白人のコメディアンは実際に仕事をキャンセルされることが多く、その不平等は問題。

キャンセルされたコメディアンの有名な例が1980年代から1990年代にかけてテレビ番組『ロザンヌ』で人気を博したロザンヌ・バーさん。2018年にリバイバル版が復活したものの、本人がツイッターでオバマ大統領の側近の黒人女性を「猿の惑星」に例えるなど多数の人種差別的な発言をしていたことが問題視され、すぐに打ち切りに。著者はこのときリバイバル版にライターとして参加していて、バー氏がトランプを支持しQアノン陰謀論を拡散していることなどを懸念しつつもメジャーなテレビ番組の仕事と割り切っていたが、人種差別が問題となり同僚の黒人女性コメディアンが抗議の辞任をしたのを見て自分も続くべきか悩んだ。バー氏は有名なコメディアンが実際に差別的な発言を理由にキャンセルされて仕事を失った珍しい例だけれど、そもそも以前からあれだけ極端な差別発言を繰り返し行っていたのにテレビ番組がはじまった(ツイッターで批判が高まるまで黙認されていた)ことのほうが問題だったような。