Philip Bump著「The Aftermath: The Last Days of the Baby Boom and the Future of Power in America」
過去50年にわたってアメリカ社会を形作ってきたベビーブーム世代からミレニアム世代以降に社会の中心が移行しつつあるなか、文化や政治がどのように変わるのか「ベビーブーム後」のアメリカ社会を展望する本。
本書の前半はベビーブーム世代がその膨大な人数によって第二次世界大戦後のアメリカ社会の教育・住居・消費者文化などを自らを中心に作り変えてきたか、そして政治においてもほかn世代に比べて大きな影響を保ち続けてきたかを紹介、後半はそのベビーブーム世代が引退をはじめミレニアル世代以降に人数で追い抜かれつつあるなかアメリカ社会が再びどのように変化しているかを論じている。わたしも著者もベビーブームとミレニアルに挟まれたX世代なのだけれど、上にベビーブームが居座っていたせいで力を得ることがないままミレニアルに台頭されて割を食ってしまっているのが悲しい。
ベビーブーム世代とミレニアル世代以降を比べると、アメリカの若い世代は人種的・宗教的にもセクシュアリティや価値観においても多様化しており、政治的にはかつてほど「若いうちはリベラルで歳を取るごとに保守化していく」パターンが当てはまらなくなっている。リベラル派の一部はこれを根拠に「いずれ世代交代によりリベラルが常に選挙に勝てるようになる」と考えているが、実際にはそれほど単純な話ではなく、たとえば人種的な多様性が高まっているのは調査が複雑な人種的アイデンティティをより汲み取るようになった結果でもあるし、人種と支持政党との繋がりは(黒人教会の影響力の低下などの変化もあり)かつてほどの影響を持たなくなっている。
近いテーマを扱ったKevin Munger著「Generation Gap: Why the Baby Boomers Still Dominate American Politics and Culture」ではベビーブーム世代が人数の多さとちょうど寿命が伸びるタイミングに居合わせたことで前後の世代に比べて政治に大きな影響を持ってきたことや、そのため年金制度や気候変動などをめぐって自分たちの将来を守ろうとしない政治にミレニアル世代が疎外されていることなどが論じられたが、本書ではすでに世代間の逆転がはじまっている兆しがいくつも紹介されている。