Darren Byler著「In the Camps: China’s High-Tech Penal Colony」
中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人やカザフ人などムスリム系少数民族を対象に展開している高度な技術を使った監視や「再教育」センターへの収監についての短い本。著者は2018年にシアトルのワシントン大学で博士号を取った若い人類学者で、中国に帰国中に強制収容所に入れられた回族出身のワシントン大学の学生のエピソードや、シアトルにあるマイクロソフトやアドビシステムズの研究施設と中国の監視技術会社との関係など、シアトルでの取材を元にした内容もあり、地元民として興味を持った。タイトルの「penal colony」というのは本来「流刑地」という意味だけれど、「刑務所化された植民地」という文字通りの意味が現在の新疆ウイグル自治区にぴったり当てはまる。中国政府が「民衆による反テロリズムの取り組み」と呼ぶ少数民族弾圧に漢人だけでなく一部の少数民族出身の人たちが脅されたり人質を取られるなどして強制的に参加させられるくだりなど、読んでいて息が詰まる。
同じテーマを扱った本としてはGeoffrey Cain著「The Perfect Police State」もあったけれど、そちらではトルコ在住の著者がトルコに亡命したウイグル人を中心に取材しているのに対し、この本はカザフ人や回族の人などの証言が多く含まれていて、それぞれ微妙に異なる、それでもおそろしい弾圧の様子が描かれている。ここ数年で漢人入植者のあいだでのウイグル人やその他のムスリム系少数民族への偏見がさらに強まったという証言と、それでもほとんどの漢人たちも政府の間違った政策による被害者でありかれらを恨むべきではない、という亡命者の発言が突き刺さる。