Dalia Kinsey著「Decolonizing Wellness: A QTBIPOC-Centered Guide to Escape the Diet Trap, Heal Your Self-Image, and Achieve Body Liberation」

Decolonizing Wellness

Dalia Kinsey著「Decolonizing Wellness: A QTBIPOC-Centered Guide to Escape the Diet Trap, Heal Your Self-Image, and Achieve Body Liberation

黒人でクィアな栄養士による非白人のクィア&トランスの人たちに向けたセルフケア本。著者は黒人やその他の非白人コミュニティにおける生活習慣病の危険が高いことを是正するために栄養士を志すけれど、そこで著者が見たのは医療業界における大小さまざまなレイシズムやホモフォビアなどの問題と、それらを考慮に入れない自己責任論の横行だった。たとえば白人に比べて黒人が平均的に不健康で短命なことには、日常的に人種差別に晒されていることのストレスの影響や、差別や貧困によって健康的な選択肢を取れないこと、住環境から医療へのアクセスまでさまざまな面での格差があることが関係しているはずだが、栄養学は黒人たちの文化や生活習慣にその原因を求めてしまう。この本は、自己責任論やダイエット文化へのオルタナティヴとして、自分を含む非白人のクィア&トランスの人たちのための社会的公正の価値観とセルフケアを中心とした、脱植民地化した「健康」のあり方を訴え、そのガイドとして書かれている。

わたし、セルフヘルプ系の本は苦手なんだけど、ごく短いなりに(全部で150ページもない)プラクティカルなガイドと主流派ダイエット文化や社会的文脈に無頓着な健康法の奨励に対する批判をきちんと両立させている。ただ個人的には、最近「〜を脱植民地化する」という言葉が「植民地化された土地やその主権を先住民に返還する」という以外の意味でやたらと使われていることを見かけるのはどうかと思っている(たとえば以前「脱植民地化したヨガ」というのを主張している人がいたので話を聞いてみたら、ただ単にレイシストではないヨガ教室という意味で、インド文化へのリスペクトすら感じなかった)。