Tarana Burke著「Unbound: My Story of Liberation and the Birth of the Me Too Movement」

Unbound

Tarana Burke著「Unbound: My Story of Liberation and the Birth of the Me Too Movement

ハッシュタグとして爆発的に広まるずっと以前からMe Too運動を広げていた活動家タラナ・バークさんの待望の本。Me Tooというフレーズがどう生まれたかという話はこれまでいくつものインタビューなどでも触れられてきたけど(彼女自身の書いた説明はここ)この本ではそれが彼女のこれまで生きてきた経験のなかに位置づけられ、後悔とともに詳細に語られる。

キャンプディレクターとして参加した黒人の子どもたちのためのサマーキャンプで出会った反抗的な12歳の女の子が勇気をふりしぼって性虐待被害を告白したとき、自分自身の性暴力被害と折り合いをつけれてなかったバークさんは他の職員に彼女を押し付け、彼女と向き合うことができなかった。もともと反抗的な態度でほかの子どもや職員とトラブルになっていた彼女が心をひらいていたのは、バークさんだけだったのに、自分はカウンセラーではない、その話を自分にしないでほしい、と彼女を避け、逃げ回ってしまい、二度と彼女と話をすることはなかった。あのとき彼女にMe Tooと一言すら言えなかった––という話はこれまでにも聞いたことがあったけど、詳細に読むと女の子の気持ちとバークさんの気持ちの両方がさらに痛々しく感じられる。Me Tooとは特定の個人を糾弾して仕事や評判を失わせるためのものではなく、性暴力の被害を受けた人たち、とくに黒人女性やその他の非白人女性やトランス女性など、被害を訴え出ても声を聴いてもらえないことが多い人たちが「自分はひとりじゃない」とお互いを見つけ合い、支え合うためのメッセージだ。

本書ではほかにも、通っていた学校や関わっていた黒人団体などにおいて、性暴力が黙認されその沈黙に自分も加わってしまった後悔なども書かれていて、共編著「You Are Your Best Thing」にも通じる、魂を抉るようなストレートな書き方。みんな読んで。