Solomon Jones著「Ten Lives, Ten Demands: Life-and-Death Stories, and a Black Activist’s Blueprint for Racial Justice」
ジョージ・フロイド、マイケル・ブラウン、ブリオナ・テイラー、エリック・ガーナーなど警察によって殺害されBlack Lives Matterのハッシュタグとともにその名前が知られるようになった10人の黒人たちのストーリーとともに、「どうして殺害が起きてしまったのか」「どうして警察官が殺害の責任から逃れられたのか」を探り、それぞれの事件からの教訓として必要とされる10の刑事司法制度改革を提言する本。著者は黒人男性ジャーナリスト・コラムニストで、この問題について継続的に関わってきた人。
提言の中身は刑事司法制度改革の議論においてよく論じられているもので、いくつかは各地ですでに実践されているものだけれど、それらを個々の殺された黒人たちのストーリーと結びつけて、あのときこの制度があったら殺害は起きなかった、あるいは警察の責任をきちんと問うことができた、というかたちで提示しており、そうした議論をあまり知らない人にもわかりやすい展開となっている。また、個別のストーリーのなかでどうしてそういう改革が必要なのかを示すというスタイルは、理念的に「こうあるべきだ」と主張されるのと比べて、とても説得力を感じる。
提言の一部、たとえば警察にボディカメラの着用を義務付ける案などは、よりラディカルな改革派や警察予算削減論者などからは「改革にはならない改革」と批判されているもの(たとえば刑務所廃止を呼びかける団体Critical Resistanceの文書「Reformist reforms vs. abolitionist steps in policing」参考)だけれど、具体的かつ現実的な提言が説得力をもって主張されており、想定される一般的な読者に対してよくできた本。