Sarah Brown著「The Hidden Language of Cats: How They Have Us at Meow」
ネコの行動科学を研究している著者が、ネコがほかのネコや人間と取るコミュニケーションの方法について解説する本。
この本を読めばあなたのネコとコミュニケーションが取れるようになる!なんてことはないけど、ネコが人類と共存するうちに野生のネコ科の生物ではほとんど見られないような形で鳴き声だけでなく尻尾や耳などの動きを通したコミュニケーション手段を発達させてきたことがさまざまな研究によって示される。
もともと強いリーダーのもとに群れを作る習性のあるオオカミから進化した犬に対し、ネコの祖先であるヤマネコは群れを作らず、子どもを作る時と幼い子どもの面倒を見る時以外はそれぞれが自分の陣地に引きこもりお互いあまり交流しない。しかし人類との共存が進むなかネオテニー的な行動の変化が起こり、大人になっても遊んだりニャアニャア鳴いたりゴロゴロと音を鳴らすなどネコ科の幼体に特徴的な行動を取るようになった。著者は自身による野生の猫の観測やほかの研究者らによるさまざまな研究を通して、そうした行動の大きな意味を解説する。
笑ったのは、ネコにも人間と同じように性格がある、というネコが身近にいる人ならとっくに知ってた事実についての部分。人間の性格を数値化するスケールとして「ビッグファイブ」と呼ばれる人間の性格を5つの主要で安定した因子から分析するツールがあるが、それと同じようにネコの性格をネコ版の「ビッグファイブ」で分析しようとする試みでは、「外向性」や「神経症傾向」といった因子は人間と共通としながら、「誠実性」(もしくは良心性、conscientiousness)はネコにはない、とされているのを知って、「ネコよやっぱりか!」と思った。でもそういう自由なところがネコの魅力。
ネコの研究についての本としてはJonathan B. Losos著「The Cat’s Meow: How Cats Evolved from the Savanna to Your Sofa」のほうが広範的なトピックをカバーしているけれど、本書はネコによるコミュニケーションという部分にフォーカスしており、ネコ好きなら両方読んでも無駄はない。