Kimberly Chrisman-Campbell著「Skirts: Fashioning Modern Femininity in the Twentieth Century」

Skirts

Kimberly Chrisman-Campbell著「Skirts: Fashioning Modern Femininity in the Twentieth Century

タイトルのとおり、スカートを中心に据えた20世紀の女性ファッション史についての本。かつてのアメリカでは女性がパンツ(ズボン)を履くことが禁じられていたため、19世紀から20世紀の女性運動では女性がパンツを履いて社会のあらゆる場に男性と対等に参加する権利が唱えられたけれども、女性たちの社会参加を妨げていたのはスカートそのものではなかった証拠に、女性参政権運動でも公民権運動でもスカートを履いた女性たちは先頭に立って闘っていた。本書では、社会のなかの女性の位置づけが変化するとともに女性ファッションも変化を続け、世の中のトレンドではなく自分が着たい服を自由に選んで着る、性別はもちろん人種や体型にも制約されずに自分のために服を選ぶようになった現代までの歴史が記述される。

ファッションについてのくわしい記述はわたしにはよく分からない部分もあったので(20世紀中盤に流行ったスタイルとか)知らない言葉は画像検索して調べながら読んだ。女性のファッションに対して社会があれこれ論評する風潮は今でもあってうざいんだけど、かつては今より学校や職場に行くために着るべき服が限定されていて、ひどいなあと思いつつ、いまでもそういうのってあるよねえと思い直す。たとえば今でも多くの学校で、主に黒人の女子生徒たちが着ている服を理由に教室に入れてもらえない事件が起きているけれど、学校がその理由を「肌を露出しすぎており男子生徒が授業に集中できないから」と説明していたりして、だったら男子生徒を注意すればいいだろって思うんだけど、まあそれは別の話。

特にヨーロッパにおいて第二次大戦の影響で服の生地が入手困難になったことがファッションに与えた影響とか、ミニスカートがもともとはセクシーを狙ったものではなく若さを強調するもので、第二次大戦後の社会で「若さ」に価値が生まれたことに関連していることなど、ファッションと社会の動向がどう連動しているかという話が興味深い。ミニスカートはどんどん短くなり、それが行き着くところまで行き着いたあとで逆に長くしたミディが登場するけれどそれに反対するデモが起きた話とかもおもしろい。でも社会全体でスカートの丈が長くなったり短くなったりとか、正直わけわからない。人によって似合う長さも好きな長さも違うじゃん?その日の気分ってのもあるじゃん?って思うのはわたしが21世紀の人間だからだろうか。

終盤ではボディポジティヴ運動の影響や、男性がスカートに手を出し始めた話も出てきて、ファッションを決めるのが社会的規範からデザイナーやファッション業界を経て、個人の自由に移行しつつあることを示している。ファッションに疎いわたしでも自分のスタイルを貫いているフリができるいい世の中になったと思う。あと、男性がもっとスカートを履くようになれば、本書の最後で問題とされているスカート内の盗撮やそれをしやすくしているアーキテクチャの問題にも対処が進むかも。