Charles L. Marohn著「Confessions of a Recovering Engineer: Transportation for a Strong Town」

Confessions of a Recovering Engineer

Charles L. Marohn著「Confessions of a Recovering Engineer: Transportation for a Strong Town

「強い街」(ストロングタウン)を推進する市民工学者による二冊目。交通の設計をテーマとした本書は、交通工学者たちが専門領域内の論理で「できるだけ速く多くの車を移動させる」ことばかりを優先した結果、豊かな街を作る「ストリート」とそれらを繋ぐ「ロード」の両方の役割を果たそうとして失敗した「ストロード」をそこら中に生み出し、街の安全と豊かさを犠牲にしてしまったことを告発する。そこには連邦政府や自治体の硬直化した交通予算の分配や、専門家による知識の囲い込みと非科学的な交通予測、政治家の不勉強などさまざまな問題が。ストロードを解消し、一部は自動操縦車でも走れるように要素を簡素化したフリーウェイ(ロード)にして、残りは車線の数を減らし速度を落としたストリートに転換すべきだ、連邦政府はロードの整備に責任を持ち自治体は独自の予算と権限でストリートを設置すべきだ、という提言は説得力がある。

歩ける街、自転車で行き来できる街を提唱するとともに公共交通機関の利用拡大にも著者は積極的だが、一般にバスや電車の予算推進に使われる論理――都市部における交通渋滞や駐車場不足の解決策として、温暖化ガス削減のため、車を買えない貧困層のため、など––に対しては批判的。それらの主張の多くは車の利用を前提としたうえで、それを補完するものとしてバスや電車が想定されており、公共交通機関によってどうやって都市の各地域を豊かにしていくかという視点に欠けている、とする。どのような街を作るのか、という思想を抜きにして交通の設計はできないし、だから市民工学には市民や政治による目的設定が必要。専門ではないので個々の論点については評価できないけど、自分が知っているシアトルの例(シアトルと東側の郊外を繋ぐSR-520の利用は毎年減っているのに、ワシントン州交通局は一貫して翌年からの増加を予測している件)などもあり、興味深い。