Samira Mehta著「The Racism of People Who Love You: Essays on Mixed Race Belonging」

The Racism of People Who Love You

Samira Mehta著「The Racism of People Who Love You: Essays on Mixed Race Belonging

白人アメリカ人の母とインド系移民の父によってコネティカット州で育てられ大人になってからユダヤ教に改宗した著者による、人種差別やアイデンティティについてのエッセイ集。

アジア系アメリカ人なら誰もが経験する、コネティカット出身だと説明したのに続けて投げかけられる「いや、あなたは本当はどこ出身なんですか?」という無邪気な質問から子どものころ母国の独立時にパキスタン領となった土地から難民として逃げ出した父親と白人アメリカ人として出身地をそれ以上詮索されない母親のそれぞれの経験について語る章、ヒンドゥー教の伝統とは関係なくベジタリアンになったはずなのにどこかインドの高カースト文化のベジタリアニズムと似たこだわりを内面化している著者自身の内省の章、インド系移民コミュニティに受け入れられコミュニティの集まりでインドの伝統衣装をうまく着こなしていた白人の母親の話から文化的窃盗と文化へのリスペクトについて考える章など、白人から見ると「外国人」と見なされがちなのにインド系コミュニティからは「自分たちの文化を分かっていないよそ者」扱いされてしまう、ミックスで育った著者ならではのエッセイが並ぶ。タイトルとなっている、自分を愛してくれているはずの母親や彼女の側の親戚らの悪意のないレイシズムや「理解できないことを理解してもらえない」難しさについての章をふくめ、とても興味深い。

ところで、いまでもそうか分からないけれどアメリカ国務省ではインドに駐在する外交官たちに対して「現地のセレモニーに招待されてもインド式の伝統衣装を身に着けてはいけない」というルールがあったらしく、最初は「現地の風習を無視しろというのか、そんなに欧米風の衣装が偉いのか」と思ったけど、どうやら過去に外交官らが(というかおそらくそのパートナーの女性たちが)伝統衣装を見様見真似で着た結果、中途半端なコスプレみたいになってしまったり、その場その場に適切な柄や着こなしを理解せず、かえって相手を怒らせてしまったので全面禁止したという経緯があったらしいという話があって、ありそうだなあと思った。