Michael Kazin著「What It Took to Win: A History of the Democratic Party 」
現存する世界最古の政党であるアメリカの民主党の歴史についての本。著者は著名な歴史学者で、スタンダードな歴史を安定した語りで綴っている。当たり前の話だけど、19世紀以来多くの大統領を排出してきたアメリカ二大政党の1つについての歴史を語るということは、そのままアメリカの歴史を語ることに等しいわけで、民主党の歴史というよりはアメリカの歴史から共和党内部の話題を省いただけみたいな気もする。
アメリカ民主党はかつては南部に基盤を持つ奴隷制と人種差別を擁護する政党で、1960年代の公民権法や選挙権法の成立をきっかけに南部白人層を共和党に受け渡し、「都市部リベラルとマイノリティの党」に衣替えしたことはよく知られている。しかし白人層との関係だけを見るならば、その根底にあったのは資本主義の枠内で大企業や資本家の横暴に対抗する「民衆の党」という性質で、1980年代のレーガン政権による労働運動の破壊を経て1990年代のクリントン政権による「第三の道」への方向転換が起きるまでは一貫してポピュリズムの党だった。著者は人種的マイノリティや女性や同性愛者の権利の拡大を歓迎しつつ、民主党がふたたび労働者の味方としてポピュリストの党に立ち戻ることを訴え、サンダースやAOC、そして非白人の移民女性たちを支援する労働運動などに期待を寄せる。って普通の白人左派か。
まあそれだけの話で、アメリカの歴史について詳しい人ならわざわざ読むまでもないかもしれない。わたし自身、途中なんども「別に新たに学ぶことはないかな」と思ったもの。でもまあさすがに力のある著者だけあって、そこそこ長いしそんなにエキサイティングでもないけど読める。しかしまあもっとおもしろいテーマあっただろうになんでこんなの書いたんだろう。