Gabrielle Blair著「Ejaculate Responsibly: A Whole New Way to Think About Abortion」

Ejaculate Responsibly

Gabrielle Blair著「Ejaculate Responsibly: A Whole New Way to Think About Abortion

タイトルは「責任持って射精しろ」。妊娠中絶の権利は憲法で保障されないという最高裁判決が今年6月に下り、多くの州で中絶の禁止や極端な制限を定める法律が実施されるなか、妊娠中絶問題に新たなアプローチを提示する、と称する本。著者はデザイナーで6児の母として活躍するソーシャルメディアインフルエンサーで、この短い本自体、ツイッターでバズった話を膨らませたもの。

まあバズりツイートを膨らませた本だけあってタイトルで内容がほとんど言い尽くされているのだけれど、望まない妊娠について女性の責任ばかりが問われるのはおかしい、全面的に男性の責任を問うべきだ、という話。たとえば銃を持って遊んでいる人と、自分に向けて撃ってみろよという人がいたとき、それが両者の同意に基づくものであったとして、どっちも不用意なのは確かだけれども、実際に銃を撃ったなら悪いのは撃ったほうだろと。女性がいくらセックスを望み、楽しんでも、男性が射精しなければ妊娠しないのだから。

生物学的な理由として、一般的に女性は80年生きたとしても生涯のうち妊娠できる日が500日もないのに男性は2万5000日も相手を妊娠させる可能性がある日がある、排卵日の予想は難しく妊娠したい人にとっては目安になるけれども避妊には役に立たない、避妊薬は処方箋を必要とし雇用者によっては「宗教的な理由で」保険適用外にされるし副作用がある、コンドームは処方箋もいらず簡単に買えるがサイズやアレルギーの有無や好みなどの問題があり男性が自分にあったものを常備すべき、避妊手術は女性より男性のほうが簡単で安全、などいろいろ書かれているけど、根本的には「女性は身体的あるいは人生上のリスクをめっちゃ負担させられるんだから、社会的な責任は100%男性が取れよ」って話。

ちなみに「この本はシスヘテロの関係についてだけ書いています」、あと「妊娠中絶のうち望まない妊娠を理由とするものについてだけ取り上げています」というアリバイ的な話は最初に書いてあった。ごちゃごちゃ言わず、ツイッターのバズったスレッドだと思って楽しく読めばいいと思うの。

追記:邦訳「射精責任」2023年3月刊