Susan Knilans & Jacqueline Freeman著「What Bees Want: Beekeeping as Nature Intended」
ミツバチが好きで好きでたまらない著者らによる、ミツバチを趣味として飼うための指南の本。近年アメリカでは、新たな外来種や害虫の増加や環境破壊・殺虫剤の多用などにより、蜂蜜の生産だけでなく農業にも必要なミツバチの数が激減していると言われているけれど、著者らは蜂蜜生産のための工業的な養蜂とは一線を画した趣味としてのミツバチ飼育にハマり、より自然に近い「ミツバチが好む」環境を整えることで人間とミツバチの共存を目指している。工業的な養蜂では蜂蜜を取り出しやすいような直方体の巣箱が使われ、新しい嬢王蜂の羽化による自然な群の分割を防ぎ人口的に分割するような介入が行われたり、蜂蜜を取り上げるかわりに安い砂糖水をエサとして与えたりするが、著者はそうした人間の介入はミツバチにストレスを与えミツバチの健康を害すると主張する。
そんなに自然のままが良いならわざわざミツバチを自宅の庭に持って来なくても良いような気もするのだけれど、わたしも犬を飼っているので蜂に愛を注いで家の近くで飼いたいという欲望は否定できない。で、できるだけミツバチが幸せになれるような環境を作って、家の近くに住んでもらう方法が図解とともに詳しく書かれているのだけれど、著者はミツバチについて相当詳しいのだけれど、それでも普通に巣を全滅させてしまったり、蜂を起こらせて刺されまくったりもしているので、さすがにこれを読んで「よし、飼おう!」とはならないように思う。地域によってはミツバチを飼いたい人のための教室やクラブがあるみたいなので、やりたい人は是非そちらにご連絡を。
ミツバチが巣の中の気温をうまく調整できるような構造の巣を提供したり、どうしてもエサが足りないときは地元の自然農家から蜂蜜を買ってきて与えたりするなど努力はするけれど、うまくいかなくて巣が全滅することがあるのも仕方がない、それも自然だ、と言う著者は、ミツバチが全滅していなくなった時に限り残された巣から蜂蜜をもらう、という主義らしく、蜂蜜を取るための養蜂ではない、というのは本気みたい。これを読んでも蜂を飼いたいとは思わないけど、飼っている人がいたら見せてほしいな、くらいは思った。著者はワシントン州在住らしいので案外どこかで繋がってるかも。