Scott Ellsworth著「The Ground Breaking: The Tulsa Race Massacre and an American City’s Search for Justice」
今日(5/31-6/1)からちょうど100年前にオクラホマ州タルサで起きた白人市民による黒人大量虐殺事件についての新しい本が出たので読んだ。著者は白人の歴史学者だけど、ポートランドのリード大学の学生だった時から「ブラック・ウォール・ストリート」と呼ばれた繁栄した黒人コミュニティの暴力的な破壊事件について調べ始め、生存者たちと協力して歴史を掘り起こし、1993年にこの問題について書籍を出した人。最近では被害者の集合墓地の発見などにも参加している。事件については日本語でも「ブラック・ウォール・ストリート」で検索すればいくつか出てくる。破壊や殺戮が起きた経緯やその後の証拠隠滅(警察が写真館に警察官を送り込み、現像前・現像中のフィルムを押収したほど)など、ネットの記事を1つや2つ読むだけではわからないようなことまで学べるのだけど、この本の主題は事件そのものについてではなく、そのように巧妙に隠蔽され、忘れ去られようとしていた事件が、どのようにして黒人たちや協力者たちによって掘り起こされ、正義を求める運動が起きてきたか、という話。あきれるほど地道な取り組みによって、事件当時の写真がみつかったり、犠牲者の遺体が埋められた場所が特定されてきたりして、それを受けて市や警察の責任が問われ、どのように責任を果たすべきか、という議論に進むけど、現在の世代は過去の行為に責任がない、といった反発も。この問題については他にもいくつも本がある。てかさっき知ったのだけど、Tim Madigan著「The Burning: Massacre, Destruction, and the Tulsa Race Riot of 1921」という有名な本は中高生向けに読みやすくしたバージョンも出てるので英語が不安な人にはおすすめかも?