Jana Tiffany & Michael Baran著「Subtle Acts of Exclusion: How to Understand, Identify, and Stop Microaggressions」

Subtle Acts of Exclusion

Jana Tiffany & Michael Baran著「Subtle Acts of Exclusion: How to Understand, Identify, and Stop Microaggressions

黒人女性として育てられたノンバイナリー自認の人と、ユダヤ系白人男性の二人によるマイクロアグレッションについての本。著者たちはダイバーシティ関連のトレイナーやコンサルタント、つまり企業や団体に雇われて組織内での差別やハラスメントをなくす仕事をやっている。わたしには、そういう人たちに対して「アクティビストが生み出した概念や運動の機運に便乗して、企業が差別やハラスメントをなくすためになにかやっているというアリバイを与えるだけの連中」という偏見があるのでダイバーシティコンサル系の本はめったに読まないのだけど、きちんと論じられることの少ないマイクロアグレッションについてなにか得るものがあればと思って読みはじめた。

でも1/3くらいで止めた。わたし、読み始めた本は不満があってもけっこう最後まで読むほうなので、途中でギブアップするのは珍しいんだけど、決定的にダメだと思ったのはスクショの部分。人種についての対話というイベントで、参加者の一人が南北戦争の再現行事に参加するため遅れた。南北戦争再現行事というのは、南北戦争の戦いがあった場所で当時の軍服や装備などを再現して参加者が実際の戦闘を演じるというもので、奴隷制を維持しようとしてアメリカ合衆国に反逆した南軍を正当化したり人種差別をなかったこととして扱おうとするレイシストたちに人気。

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再現に参加した人が遅れて対話イベントに来たとき、たまたま黒人男性が「南軍に共感する人たち」に批判的な発言をしていた。司会をしていた白人女性はかれが再現行事に参加して遅れたことを知っていたので、それを知らなかった黒人男性の発言にかれが傷ついたのではないかと思い、遅れてきた人に説明するチャンスを与えた。かれは南軍のすべてに賛成するわけではないけど、南軍に関連した行事に参加することは自分の家族との繋がりを確認することだと言い、そこから二人は家族の大切さについて語り合い、お互いを尊重した、と。そして著者は、この「反レイシズム」ファシリテータの技術を称賛。いやいやいや絶対その黒人男性、怒ってるでしょ!

マイクロアグレッションについての本なのに、南軍の行事に参加して人種問題についてのミーティングに遅れてくる人に何も言わないばかりか、黒人男性が南軍に共感する人たちを批判したことをマイクロアグレッション扱いして、南軍への共感を示している白人(だと思われる)を被害者として扱ってる。ありえないわー。それ以外は当たり前というか初歩的な話ばかりで、最後まで読めばなにか学べるのかもしれないけど、期待できなさそう。