Curtis Bunnほか著「Say Their Names: How Black Lives Came to Matter in America」
どのようにして「黒人の命は大切」になったのか、をテーマとした5人の著者Curtis Bunn、Michael H. Cottman、Patrice Gaines、Nick Charles、Keith Harristonによる共著。2020年に最大の盛り上がりを見せたブラック・ライブズ・マターの運動とその背景にある経済的・社会的格差や貧困・黒人の大量収監などの問題と、それに対する黒人たちの抵抗の歴史についての短めの12本の文章が掲載されている。個人的に特に良かったと思ったのは、BLM運動に参加した高校生ら若い人たちの声をまとめたはじめの章、コロナウイルス危機によって表出した医療格差とその背後にある黒人の置かれた社会的・経済的状況についての章、過去の公民権運動において黒人教会が果たした役割が過剰に一般化されていると指摘するとともに、クィア女性が中心となってはじまったBLM運動がジェンダーや性の問題に対して保守的な黒人教会に突きつけている課題を指し示す章、2020年の大統領選挙およびジョージア州上院選挙におけるステイシー・エイブラムスに象徴される、黒人女性が果たしてきた、そしていまも果たしている役割についての章など。各章は短めであっという間に終わってしまう感があるけど、全体として見るとよくできている。BLMだけでなく黒人による政治運動の現在について知るための本。