Stephen Guinan著「We Are the Troopers: The Women of the Winningest Team in Pro Football History」
女子アメフトリーグ9年間の歴史でチャンピオン7回、通算58勝4敗1分けという記録を残して「最も勝利を重ねたチーム」としてプロフットボール殿堂にも認定されている最強チーム、トレド・トゥルーパーズについての本。世の中で女性解放運動が盛り上がるなか発足した女子アメフトリーグについては以前にもBritni de la Cretaz & Lyndsey D’Arcangelo著「Hail Mary: The Rise and Fall of the National Women’s Football League」で読んでいて、どうしてもそちらと比べてしまうのだけれど、あまり知られていない女性史についての本がこうして複数出版されること自体はうれしい。
比べてしまうと言ったのは、「Hail Mary」の著者はライターとしての実績のあるクィア女性&ノンバイナリーの人で、実際に元選手を探し出して取材して書いているのに対し、こちらの本はトレド出身でたまたまトゥルーパーズのことを聞いたフットボール好きな主にフィクションを書いている男性が当時の報道資料などを元に書いた本、という違いがあり、どうしても「Hail Mary」のほうをわたしは評価してしまう。「Hail Mary」にはレズビアンコミュニティの関わりも書いてあるけれど本書にはそういう内容はなく、「選手たちは女性解放運動には興味を持っていなかった」と繰り返しわざわざ書かれているのも気になる。
トゥルーパーズというチームについての本と言いながら主役は選手たちではなく「女性アメフトリーグ」という興行を思いついて実現させた男性興行主のように読めるし、重要な試合の展開をプレイごとに詳しく書いているのはアメフトファンではないわたしにはよく分からないしくどく感じる。ていうか「Hail Mary」を読む限り当時の報道の内容はそれほど詳しくなくて、最終的な点数すらよく分からない試合もあるくらいだというのに、プレイごとにどの選手がどのように考えてこう動いた、みたいに本人に取材もせずに書いているこの本の情報源が何なのか、怪しくすら感じる。フィクションにしちゃってません?
悪口ばかり言ってるみたいだけど、たぶん「Hail Mary」より先にこれをわたしが読んでいたら、こんな女性たちがいたんだ!という衝撃でもっと好意的な感想になっていたと思うのよ… ほんとタイミングが悪かったとしか言えないけど、それでも女子スポーツの埋もれた歴史についての本が増えるのは歓迎したい。表紙の写真はカッコいいし。