Ruth Wilson Gilmore著「Golden Gulag: Prisons, Surplus, Crisis, and Opposition in Globalizing California」
カリフォルニア州がどのようにして世界最大の囚人収容システムを生み出すことになったのか、第二次大戦後から2000年代までの歴史をたどる本で、刑事司法制度批判における最重要文献の一つ。一般にはリベラルな州として知られるカリフォルニアは、同時にリチャード・ニクソンとロナルド・レーガンという全国的に刑罰の重罰化を推進した二人の大統領を生み出した州であり、刑務所の建築ラッシュと黒人を中心とした市民の大量収監のさきがけとなっていた。10年以上前に出版された本だけれど、たまたま見かけたので読んだ。著者は刑罰地理学という、刑罰と物理的空間の関係を研究するフィールドの第一人者。
著者は「刑務所が増えたのは民間企業が儲けるため」といったありがちな陰謀論を否定しつつ、陰謀はなかったけれど構造的な要因はあった、として、軍事ケインジアン経済の行き詰まりなど経済構造の変化、土地や労働力の余剰、連邦政府の福祉制度からの撤退と税制の改定など、さまざまな要因を追ってカリフォルニア州が全国に先駆けて巨大刑務システムを構築した背景を説明する。そのうえで、刑務所に入れられる都市部の非白人vs.刑務所設置によって潤う田舎の白人という構図にも異を唱え、両者が協力して刑務所の縮小・閉鎖と双方の貧困地域の救済を進める道を示す。